大海原の小さな光

アーマードライダーになって調子に乗っていたらひどい目にあった。そう思っている紘汰は光実のことも不安でならなかったが、当の光実本人はまるで気にしていなかった。力に危険は付き物だと思っているし、昔からレールの上を行くばかりだった人生で初めて自分で選んだことをするという感動があった。まぁ、やはり調子に乗っていた感は否めないが、それでも紘汰よりは多少考えや事情がある。

龍玄はバロン/戒斗および彼の操るインベスにどれほど追い詰められても決して諦めなかった。これを舞は、その様を光実が常に尊敬する紘汰が見ているからだと思い、そのことから紘汰は自分の道を見つけた。この展開自体は良いんですが、光実はしばしば舞のことを考えてるような台詞も言ってるんだよな。この勝負でも「負けられない。紘汰さんが、舞さんが見てる」て言ってるし。この辺の微妙な意識のずれが後々面白いことに繋がりそうな、繋がらなさそうな。

さておき。龍玄の戦いを通じて紘汰は自分の戦いの動機、強さ論を得た。ひとを励まし、勇気を与える力。言っては何ですが、完全に考え方の一つ程度に過ぎませんよね、それ。強者と弱者との区分、強者による弱者の支配など、威圧的イメージにこだわる戒斗との対比なんだろうが、これこそが真の強さなどと絶対視できるものではない気がする。だが、別に良い。誰かを守るための戦いが何の根拠も無く無上のこととされる、なんてテンプレネタをなんの捻りもなく出してくる馬鹿の一つ覚えみたいな展開よりはよほどましだ。


チームバロンの参加に加えられていた連中が二人新たなアーマードライダーに変身した。呉島兄とディーラーシドとの会話によればこれで人に配るべき六個のドライバーのうち五個までが使われたという。詰まり呉島兄を含めて本作のライダーは少なくとも七人居るということだな。かなりの大所帯だ。TV版に限れば『龍騎』に次ぐ量じゃないか、と思ったがどこまでを数に含めればいいか怪しい作品も多いから迂闊な判断は出来んか。

アーマードライダーになった者の名簿を見るかと聞かれて、必要無い、全て任せる、などと妙に余裕ぶった答えを返してしまった呉島兄。かくして彼は弟の現状を知り損ねたのだった。情報を教えなかったのは聞かれなかったからだというのはよくある誤魔化しであるが、彼の場合は教えてもらうチャンスを自らふいにしたのがなんだかなぁ。

二人の会話からは他に、ヘルヘイムの森という場所を調べていることが分かる。これは明らかにインベスがいる異空間のことだろう。つまりユグドラシルにとっても森は現在調査中の事柄なわけだ。ロックシードを介してインベス、更にはドライバーといった変なものをばら撒いている連中だが、全てを操っている黒幕ってわけでもなさそうだ。『W』や『フォーゼ』の怪人になる道具を人々に与える組織とは似て非なるものになりそうだ。


今回のインベスは、前回省かれた龍玄の初戦の相手となったものでコウモリ。空中を自由に飛び回るのが持ち味であったようだが、龍玄にはあまり意味が無かった。飛び道具も使えるしな。

他にバロンが二体のザコを等身大の実体で呼び出した。戦極ドライバーの力の一環だそうです。そういえば以前呉島兄がヘルヘイムの森でインベスを操って戦わせたこともあるし、視聴者としては納得できなくも無い。だが、戒斗が既にドライバーの力にそこまで通じているというというのはやや不自然で違和感がある。