大海原の小さな光

いよいよ笛木の計画が成る。四人の魔法使いを使ったサバトが始まるのだ。その方法は具体的には、四人の魔法使いを人柱に使った陣で東京都民全てを全てを生贄とする、結果ゲートは全てファントムになりただの人間は残らず死ぬ、というものである。どう考えてもコストとリターンとが全く釣り合っておらず、ただの迷惑行為でしかない。これはさすがに弁護の仕様がない。ここまで悪辣にする意味があるのか。

しかしながら、このサバトに関して作劇としては褒めるべき点が幾つかある。先ず、対象を東京都とハッキリ指定したこと。世界征服とか世界滅亡とか、吹く輩は多い。ヒーロー番組においては特に顕著だ。が、しかしながら“世界”という言葉の指すものは曖昧だ。この生まれてから百数十億年のときを経ていると考えられている宇宙のことを指しているのか、この生まれて四十数億年のときを経ていると言われるちっぽけな惑星のことを指しているのか、はたまたこの日本列島と言われる小さな島々及びそこにある国家のことを指しているのか。或いは更にその中のどこかにある何らかの範囲を指しているのか。世界というのは究極的にはその場の都合で指すものが変わる。

そして、この日曜朝にやっているような特撮番組では予算の都合や製作者の思考不足などから、いかにも大変そうな煽り方で世界がどうのこうのと言っておいて、その世界とやらが物凄く小さいことがよくある。私としては“世界”という言葉を使うからには最低でも地球、基本は宇宙規模の話をして欲しいと思っているので、街中が少しぶっ壊された程度で世界の危機と抜かされると軽く詐欺に遭った気分になります。あ、ただし平行世界を旅するような話は別。その場合一個の世界は一つの町程度でも別に気にしません。

兎に角。世界の危機とか言って指す範囲が物凄く狭いようにしか見えない作品が多い中本作は、東京都民が対象だと言い切った。どの程度の範囲を想定しているのかかなりハッキリしており好感が持てる。今までのファントムの作戦が基本全て、一人の人間を対象としたものだったから、東京都民全て程度でもとんでもないインフレに見えるし。非常に上手い設定だと思います。


そしてそれを止めるのがビースト、が自ら解き放ったキマイラという展開。これも良かった。キマイラが魔力を食う、という設定はこのときのためにあったんですね。キマイラがそのどこまでも妙な性格を認めビースト、否、仁藤を自分の僕から解き放ってやるところまで含めて実に良い流れです。自分のうちにある自分を滅ぼしかねない危険なものと打ち解ける展開は、やはり上手くやれば良いものだ。晴人にとってのドラゴンは自分にとっての脅威って感じが足りなかったからなぁ。


次回。どう考えてももう終わりそうな流れだが、まだ終わらないらしい。