刀語 第11話「毒刀・鍍」
左右田右衛門左衛門の到着。
いよいよ終わりも目前、最高に盛り上がる。筈なんだが、どうしてこう大事なところで演出を間違えるかねぇ。
今回は言うことが多いですよ。原作だとこの辺(10話、11話)は時間稼ぎも露骨で本編の実質の量はかなり少ないのだが、アニメ版だと逆に今までやってなかったことのつけが回って、説明が追いつかず妙に不自然な話になってしまってますね。
ついに現れた真庭鳳凰というよりその体を乗っ取った四季崎記紀との対決。なのですがその前に、四季崎記紀が語る全ての秘密。これ、今まで伏線が全く無かったせいで、予知能力云々が全部ただの唐突なホラ話に過ぎなくなっている。炎刀・銃初登場時の地の文とか、日和号を解説する否定姫とか、本来ならそれら伏線があった上で、なるほどそういうオチだったのか、と思うところなのに。根本的な構成さえ出来てないとはどういうことなのか。
続く直接対決自体がまたアニメ版『刀語』三大ガッカリ戦闘の二つ目を飾る代物である。四季崎記紀が七花の攻撃に対応できたり、繰り出した攻撃が周りの建物や地面を壊したり、あれじゃ本当に強そうに見える上にシーン自体もなんか間延びしてる。原作の展開は凄いですよ。自分は、既に敗れることを予知していると告げた上で、そもそも鍛冶であって剣士ではないのだから未来の技術があろうと勝てる筈がないがそれでも万が一がありえるから全力で来いと、虚刀の完了をこの身で確かめたいと、そんなようなことを続ける。その態度からひょっとして実は凄い奴なのかと思ったら何も出来ずに、まさしくあっという間に倒される。あまりのスピード展開で、作中時間では3秒も掛かってないのでは思えるぐらい早い。このスピード感こそアニメに向いてると思ったのだが、心底がっかりだよ。
戦い終わってしばらく後、右衛門左衛門が現れて衝撃のヒキ。なのですが、このシーンの演出が色々ぶち壊しにしてます。何故右衛門左衛門が現れた時点で七花ととがめとの手を離す。原作では丁寧に撃たれた直後のところで「繋いだままだった手も――引き千切られる」と書いてあるのに。何故わざわざ書いてあることを無視する。まさか字面の通りに受け取って、腕が千切れとんだのだと誤読して、そんな人体破壊描写は出来ないと思ったとか、そんな間抜けなことは言わないよな。
そして、最後のナレーションが壮絶にずれてる。まさにこのときを持って完了、てないない、それはない。七花が完了に至ったのがいつなのかは、原作でも正確には書かれていない。そもそもどうなれば完了なのかも明らかではないし。しかし、ことが成ったのがこの瞬間でないことだけは明らかだ。それは絶対に間違いない。
作品内においても作品外においても、つい先ほど現れた四季崎記紀が七花のことを自分の作った刀として高く評価したのだ。最後にはいい仕事をしたという満足の表情を浮かべて死んでいる。ならば四季崎記紀が見た時点で既に七花は完了に至っていたと考えられないか。というかそれが普通の素直な解釈だろう。無論、他の解釈もたくさん出切る。程よく曲がって、というのがミソならその曲げられた原因である七実戦を殺すという形で終えたとき、という解釈もできるし、続く第8話からの変な勝負が七花を育てておりそれこそが決めてであるという解釈も出切る。しかしこの第11話にはそういう要素が全く無い。仮にとがめを傷付けられたことによる「怒りによってパワーアップ」理論なら、それこそ七実に髪を切られたときでも、第10話で過酷な労働を強いられたときでも良かったわけで、今回このシーンに限られる理由が一切無くなる。
とまぁ、いった感じでまともに考える頭があれば蛇足であることが明白なことを恥ずかしげも無く言ってるんですよねぇ、このナレーション。
変体刀紹介コーナー
毒刀・鍍
最も毒性が強い刀。外見は完全に普通の日本刀。一周回ってとうとう、外見だけは、普通のデザインになった。尤もそれはあくまで外見だけの話である。持ってしまったら最後、精神に異変をきたすためどんな達人であろうとその者がその者であるままにこれを武器として遣うことは出来まい。その意味で限りなく役に立たない代物である。ここまで続いた精神攻撃系の中でも群を抜いて意味が無い。
登場人物紹介コーナー
・真庭鳳凰
真庭忍軍十二頭領の一人。通称、神の鳳凰。殺した相手の体の部品を自分のものと取り替えることでその者の能力を自分のものにする「命結び」という忍法を使う。真庭忍軍の頭領らしからぬ、殺しに走り過ぎない落ち着いた性格が特徴、とのことだが実はその性格も奪ったものである。
左右田右衛門左衛門(と現在名乗っている男)とはかつて友人であったが、その落ち着きはなった正確を欲してある日裏切り、顔を削ぐような形で殺した。その顔で命結びを使い、鳳凰は狙い通りに彼の性格とオマケで忍法とを手に入れた。そう、あくまで忍法はオマケである。なお右衛門左衛門はその時点では生きていたが、あまりのことに精神面で死んだ状態だったため命結びは発動した、のだとか。わりとこじつけくさい。そんな非常にサツバツとした過去を持つ彼らだが、それでも鳳凰は決して友人のことを忘れてはいなかったし、右衛門左衛門にとっても鳳凰はかけがえの無い友人という想いが最後まであった。
というような話があるのだが、アニメ版だとばっさり切られている。彼らの友情を初めとする心理描写がだいぶ削られてしまったのは話としても結構不都合なのだが。
結果的に、毒刀・鍍を持ってしまい、四季崎記紀本人あるかのように乱心して同胞たちを皆殺しにしたあげく、七花に瞬殺されたという印象しか残らなくなっている。その実力を全く見せられなかった最期は、確かに他人の人生を奪い続けてきた彼に相応しいインガオホーなのかもしれない。それはそうなのだがしかしバトルものの読者、視聴者として、真庭忍軍事実情のかしらというに相応しい実力を見せるところを是非とも見たかったという思いもまた確かである。
・四季崎記紀
変体刀を作った、伝説の刀鍛冶。第11話での事実上の対戦者。実は先祖代々続く予知能力者の生まれである。彼の一族は来るべき時に彼という優れた能力を持つ者を生み出すことが目的であり、彼自身はその能力で未来の技術を予知変体刀を作ることが目的であった。彼ら一族が願った目的は歴史の改竄とのことであるが、その改竄によって何がしかったのかということは現時点では明かされない。
真庭鳳凰の体を乗っ取る形で、この世に再び出現。七花と戦うもすぐに倒された。この描写の問題点は上記の通り。最後に、本当に鳳凰の身にかつての人間が宿ったのか、それとも鳳凰が勝手にそう思い込んでいただけなのか、突如として疑問符が付けられる。実際興味深いが私としてはそっちの方が面白いので、普通に四季崎記紀が鳳凰の体で蘇ったのだと受け取っておく。
・真庭人鳥
真庭忍軍十二頭領の一人。通称、増殖の人鳥。「運命崩し」という驚異的性能の忍法を使えるため、最年少で頭領の一人になった。というと無駄に凄そうですね。とはいえ理屈を無視してひたすらに運がいいという忍法運命崩しが恐ろしいのは事実であり、偶然敵に殺されない、偶然良い情報を手に入れる、などの現象を起こすため、諜報要因として活躍した。
もう一つ、柔球術という忍法を持つ。跳ね返れば跳ね返るほど速度が速くなっていくという物理法則を明らかに無視した柔球なる物体を投げる、それだけの技。最もそれだけで本来なら十分なのである。運命崩しによって自分には偶然当たらないし、襖や障子など弱い部分にも偶然当たりにくいのである。
運命崩しによって炎刀・銃を完全に封じており、柔球術によって単純に近づくのも困難な状況に、と一見右衛門左衛門相手にかなり有利な状況を築いた。しかし。常にオドオドとした態度をとるのが特徴で、元々若い実年齢以上に幼く見えるが、その最期は本作でも屈指の悲惨なものであった。
いよいよ終わりも目前、最高に盛り上がる。筈なんだが、どうしてこう大事なところで演出を間違えるかねぇ。
今回は言うことが多いですよ。原作だとこの辺(10話、11話)は時間稼ぎも露骨で本編の実質の量はかなり少ないのだが、アニメ版だと逆に今までやってなかったことのつけが回って、説明が追いつかず妙に不自然な話になってしまってますね。
ついに現れた真庭鳳凰というよりその体を乗っ取った四季崎記紀との対決。なのですがその前に、四季崎記紀が語る全ての秘密。これ、今まで伏線が全く無かったせいで、予知能力云々が全部ただの唐突なホラ話に過ぎなくなっている。炎刀・銃初登場時の地の文とか、日和号を解説する否定姫とか、本来ならそれら伏線があった上で、なるほどそういうオチだったのか、と思うところなのに。根本的な構成さえ出来てないとはどういうことなのか。
続く直接対決自体がまたアニメ版『刀語』三大ガッカリ戦闘の二つ目を飾る代物である。四季崎記紀が七花の攻撃に対応できたり、繰り出した攻撃が周りの建物や地面を壊したり、あれじゃ本当に強そうに見える上にシーン自体もなんか間延びしてる。原作の展開は凄いですよ。自分は、既に敗れることを予知していると告げた上で、そもそも鍛冶であって剣士ではないのだから未来の技術があろうと勝てる筈がないがそれでも万が一がありえるから全力で来いと、虚刀の完了をこの身で確かめたいと、そんなようなことを続ける。その態度からひょっとして実は凄い奴なのかと思ったら何も出来ずに、まさしくあっという間に倒される。あまりのスピード展開で、作中時間では3秒も掛かってないのでは思えるぐらい早い。このスピード感こそアニメに向いてると思ったのだが、心底がっかりだよ。
戦い終わってしばらく後、右衛門左衛門が現れて衝撃のヒキ。なのですが、このシーンの演出が色々ぶち壊しにしてます。何故右衛門左衛門が現れた時点で七花ととがめとの手を離す。原作では丁寧に撃たれた直後のところで「繋いだままだった手も――引き千切られる」と書いてあるのに。何故わざわざ書いてあることを無視する。まさか字面の通りに受け取って、腕が千切れとんだのだと誤読して、そんな人体破壊描写は出来ないと思ったとか、そんな間抜けなことは言わないよな。
そして、最後のナレーションが壮絶にずれてる。まさにこのときを持って完了、てないない、それはない。七花が完了に至ったのがいつなのかは、原作でも正確には書かれていない。そもそもどうなれば完了なのかも明らかではないし。しかし、ことが成ったのがこの瞬間でないことだけは明らかだ。それは絶対に間違いない。
作品内においても作品外においても、つい先ほど現れた四季崎記紀が七花のことを自分の作った刀として高く評価したのだ。最後にはいい仕事をしたという満足の表情を浮かべて死んでいる。ならば四季崎記紀が見た時点で既に七花は完了に至っていたと考えられないか。というかそれが普通の素直な解釈だろう。無論、他の解釈もたくさん出切る。程よく曲がって、というのがミソならその曲げられた原因である七実戦を殺すという形で終えたとき、という解釈もできるし、続く第8話からの変な勝負が七花を育てておりそれこそが決めてであるという解釈も出切る。しかしこの第11話にはそういう要素が全く無い。仮にとがめを傷付けられたことによる「怒りによってパワーアップ」理論なら、それこそ七実に髪を切られたときでも、第10話で過酷な労働を強いられたときでも良かったわけで、今回このシーンに限られる理由が一切無くなる。
とまぁ、いった感じでまともに考える頭があれば蛇足であることが明白なことを恥ずかしげも無く言ってるんですよねぇ、このナレーション。
変体刀紹介コーナー
毒刀・鍍
最も毒性が強い刀。外見は完全に普通の日本刀。一周回ってとうとう、外見だけは、普通のデザインになった。尤もそれはあくまで外見だけの話である。持ってしまったら最後、精神に異変をきたすためどんな達人であろうとその者がその者であるままにこれを武器として遣うことは出来まい。その意味で限りなく役に立たない代物である。ここまで続いた精神攻撃系の中でも群を抜いて意味が無い。
登場人物紹介コーナー
・真庭鳳凰
真庭忍軍十二頭領の一人。通称、神の鳳凰。殺した相手の体の部品を自分のものと取り替えることでその者の能力を自分のものにする「命結び」という忍法を使う。真庭忍軍の頭領らしからぬ、殺しに走り過ぎない落ち着いた性格が特徴、とのことだが実はその性格も奪ったものである。
左右田右衛門左衛門(と現在名乗っている男)とはかつて友人であったが、その落ち着きはなった正確を欲してある日裏切り、顔を削ぐような形で殺した。その顔で命結びを使い、鳳凰は狙い通りに彼の性格とオマケで忍法とを手に入れた。そう、あくまで忍法はオマケである。なお右衛門左衛門はその時点では生きていたが、あまりのことに精神面で死んだ状態だったため命結びは発動した、のだとか。わりとこじつけくさい。そんな非常にサツバツとした過去を持つ彼らだが、それでも鳳凰は決して友人のことを忘れてはいなかったし、右衛門左衛門にとっても鳳凰はかけがえの無い友人という想いが最後まであった。
というような話があるのだが、アニメ版だとばっさり切られている。彼らの友情を初めとする心理描写がだいぶ削られてしまったのは話としても結構不都合なのだが。
結果的に、毒刀・鍍を持ってしまい、四季崎記紀本人あるかのように乱心して同胞たちを皆殺しにしたあげく、七花に瞬殺されたという印象しか残らなくなっている。その実力を全く見せられなかった最期は、確かに他人の人生を奪い続けてきた彼に相応しいインガオホーなのかもしれない。それはそうなのだがしかしバトルものの読者、視聴者として、真庭忍軍事実情のかしらというに相応しい実力を見せるところを是非とも見たかったという思いもまた確かである。
・四季崎記紀
変体刀を作った、伝説の刀鍛冶。第11話での事実上の対戦者。実は先祖代々続く予知能力者の生まれである。彼の一族は来るべき時に彼という優れた能力を持つ者を生み出すことが目的であり、彼自身はその能力で未来の技術を予知変体刀を作ることが目的であった。彼ら一族が願った目的は歴史の改竄とのことであるが、その改竄によって何がしかったのかということは現時点では明かされない。
真庭鳳凰の体を乗っ取る形で、この世に再び出現。七花と戦うもすぐに倒された。この描写の問題点は上記の通り。最後に、本当に鳳凰の身にかつての人間が宿ったのか、それとも鳳凰が勝手にそう思い込んでいただけなのか、突如として疑問符が付けられる。実際興味深いが私としてはそっちの方が面白いので、普通に四季崎記紀が鳳凰の体で蘇ったのだと受け取っておく。
・真庭人鳥
真庭忍軍十二頭領の一人。通称、増殖の人鳥。「運命崩し」という驚異的性能の忍法を使えるため、最年少で頭領の一人になった。というと無駄に凄そうですね。とはいえ理屈を無視してひたすらに運がいいという忍法運命崩しが恐ろしいのは事実であり、偶然敵に殺されない、偶然良い情報を手に入れる、などの現象を起こすため、諜報要因として活躍した。
もう一つ、柔球術という忍法を持つ。跳ね返れば跳ね返るほど速度が速くなっていくという物理法則を明らかに無視した柔球なる物体を投げる、それだけの技。最もそれだけで本来なら十分なのである。運命崩しによって自分には偶然当たらないし、襖や障子など弱い部分にも偶然当たりにくいのである。
運命崩しによって炎刀・銃を完全に封じており、柔球術によって単純に近づくのも困難な状況に、と一見右衛門左衛門相手にかなり有利な状況を築いた。しかし。常にオドオドとした態度をとるのが特徴で、元々若い実年齢以上に幼く見えるが、その最期は本作でも屈指の悲惨なものであった。
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