刀語 第10話「誠刀・銓」

失われし時の輪。

いよいよネタを拾って、風呂敷を畳む段階に。なんだけどなぁ。


終わりも近づいてきた今回は、しかし精神論が中心となるとても穏やかな話である。死人が回想シーン以外ではモブにすら一人も出ない、というこの作品ではただ一つのエピソードでもある。と同時に、解決に向けて話を畳もうとしてる段階なのだが、何故かこのアニメ版はそういう要素が多少抜け落ちている。代わりに、七花がとがめのために戦っていると再確認するオリジナルシーンが増えていたりして、妙に七花ととがめとのつきあいを強調する。ここまで行くとアニメは、話の方針を意図的に変えてるとしか思えないが、そのわりには大筋が同じで変更が中途半端なんだよなぁ。

七花ととがめとが互いに恋愛感情や、それに近いもので動いているというのは、原作のオチから考えると余計な変更もいいところである。そもそもこの第10話は正にそういうところにつっこむ部分が見られるのだ。このアニメだと見事に削られたが、とがめと接触するためにいずこかを歩いてる最中の人鳥と鳳凰との会話にとがめのことを、二人きりで旅をした位で男に情が移る女だとは思えない、と人鳥が言って鳳凰が「まったくの同意見だ」と返すところがある。こちらはアニメにあるが、彼我木輪廻が七花のことを「同情しているだけ」「恋でもなければ愛でもない」とバッサリ切り捨てる一幕がある。こういうシーンを用意しとくってのがいいところなのに。


愚痴はさておき。今回は原作だとテーマがかなりハッキリしている。自分の中にある逃げて意識と決して目を瞑らず向き合う、というもの。このテーマは原作者・西尾維新の創作を考えるとかなり興味深い。特にこの2013年の夏場というタイミングでは。いや、それは与太だけど。しかしこの要素はアニメだと薄いというか、何かずれている。

彼我木輪廻こそがまさしく苦手意識の化身なのだが、七花が連想した四人に対する苦手意識が、その演出というか台詞の配置から、原作の意図を誤解されかねない。これまたアニメが意図的に原作とは違う解釈になるよう変えてるのかもしれないけど、この変更は原作に対する冒涜以外の何物でもない。

他の三人が戦って敗れたことがあるから苦手に思ってるというのはともかく、敦賀迷彩についてその名を挙げたあとすぐに彼我木輪廻が後悔だの罪悪感だのというからまるで、敦賀迷彩と戦って殺したことを悔やんでいるように聞こえる。違いますよ。

敦賀迷彩は勝つためなら何でもする人であった。その十重二十重の策略や罠の前に七花はついに捕まり、肉体的にではなく精神的に追い詰められて、敗北寸前まで行った。それが苦い経験なのだ。他の連中が敗れたことがあるという繋がりのことから見てもそれ以外考えられない。

ただでさえ戦いにおいて敗北は嬉しくないが、七花にとっては「主たる奇策士とがめに対する不忠にも通じるものなのだから」尚更であり、そこまで考えが行ったところで「彼我木が酒を呑む姿にさえ既視感を覚えた理由」は敦賀迷彩だと察するのである。そして、「彼女には負けこそしなかったものの」「かなり苦い記憶となる」と続くのだ。このような流れだから敦賀迷彩のことは敗北寸前まで行く苦戦を強いられたことが原因だとしか考えられないのである。

つまるところ後悔や罪悪感とは、苦手意識を抱く対象への感情を総じてそう言ってるのであり、七花の場合はそれがとがめへの不忠ともなる敗北のことを指している。それ以外の解釈の余地は一切ない。

七花は旅を通じて人間性がかなり育ってきているが、それでも死生観にはかなり独特の部分があるようで、戦って相手を殺すことを原則一切躊躇わない。本気で殺したくなかったのは姉だけだ。そういう人だからこそそこから少し間があった別のシーンで「人は殺したら死ぬんだよ」「そんな単純な原理からさえ、目を逸らしている」と言われるのだ。七花がそういう人物であること、第10話もかなり進んでから人を殺しながら進む七花たちの旅路への冷静なつっこみが入ること、これらを理解していないかのごとき作劇は意図的にしろそうでないにしろ、褒められたものではない。


とがめの視点での悪戦苦闘が強調されていた、のは別にいいんだが飛騨鷹比等との最後のことがかなりもったいぶっていたのはどうかと思う。あれ原作だと特にどうでもいい部分なんだけどなぁ。


変体刀紹介コーナー
誠刀・銓

最も誠実な刀。変体刀の中でも特に完了に近づいた時期に作られた、ともされる。そのデザインは柄と鍔としかない日本刀。木刀だった王刀より更に一歩日本刀に近づいた、と言えなくもない。人ではなく自分を斬る刀、「己を試す」「己を知る」刀、らしい。即ちこれも精神攻撃に特化している。真っ当な武器ではない。


登場人物紹介コーナー
・彼我木輪廻

三百年以上を生きていると自称する仙人。誠刀・銓の所有者。その姿や性格はそれを見たものによって決まり、その者が苦手意識を抱く者の投影として現れる。この場合は七花ととがめとの影響を同時に受け、凍空こなゆきの幼さ、七実の黒髪及びその髪型、汽口慚愧の姿勢の良さ、敦賀迷彩の豪快な酒飲み、そして飛騨鷹比等の性格、が混ざった形で現れた。

わけなのだが、正直なところ、アニメだとのんべんだらりとした態度が多すぎて汽口慚愧のように姿勢が良いとは全く思えない。これは原作からの問題だが、七実の髪も言われなければ気づかない程度の類似だ。そして苦手意識の描写に問題があるのは上述の通り。

自らは何もしない。戦いも全力を防御に回し、徹頭徹尾戦わない。人の最大の目的は生きることだと言い切る。様々な特徴的な考え方を持つが、それらは七花たちにとって確かに一つの教訓となった。
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