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刀語 第6話「双刀・鎚」

最後のひとつ。

今回はわりと本気で出来が悪いので批判が多めになる。


今回は原作とは描写が前後したり、描写が変わったことがかなり多いのだが、それで出来が良くなったと言えることは殆ど無い。むしろ重要な伏線が無くなったりして、粗ばかりが目立つ。

先ず、冒頭。本来原作だとここで、真庭人軍十二頭領残りのメンバーによる会議が描かれる。敵勢力が今後の方針について話してるという、今後の期待を煽るようなシーンなのだから、他と切り離して最初に描くというのは実に正しい。このアニメだと、七花たちが凍空こなゆきに匿われたちょうどその頃、などとナレーションがついているが前後の展開から言ってそのタイミングでなければいけない必然性は全く無く、何故このタイミングを指定したのかかなり意味不明である。

それから、「ちぇりお」の間違いを知ってた件から続く、七花が今まで黙っていたこと即ち父親殺し及びとがめの正体を語るところ。本来このシーンは第5話の最後船に乗ったところであり、その続きをこの第6話で回想するという構成になっている。まぁ、端的に言ってしまえば、第5話で次回に気を持たせるヒキにしてたというわけですな。これはそのままアニメに使っても全く悪くない構成でありながら何故変更したのか。仮に何らかの都合があったのだとしても、この第6話で凍空こなゆきに匿われてからこの話を思い出したように始めるのはいかにも不自然である。前回から約一ヶ月経っている筈で、しかもその間はかなり暇になるはずの船旅だった。「ちぇりお」のこととか聞かない方がおかしいだろ。普通に、実際の第5話では描かれなかったがこういう話は船上で行われて折り第6話でそれを回想する、で良かろう。本当に構成がおかしい。


しかし、ここまではまだ良い。いや全く良くは無いが、それでもこれから挙げる点に比べればまだ小さい問題点である。本当におかしいのは否定姫のシーン、これだ。原作だと途中で出てきて、蝦夷の踊山が災害地域に指定されたのは凍空一族が原因だとハッキリ言っているのだが、何故か冒頭に出たあげくその肝心な部分をカット。と、ある意味、真庭人軍十二頭領の会議シーンと差し替えられた格好だがそれは別に重要ではない。それから色んなことをグダグダ言った後次のようなシーンが続くのだ。

 くるり、と女は振り返る。
 そして床の間に飾られている――一対の刀を見る。
 一対の刀。
 しかしそれを一見で刀と判ずることは難しい。いや、この時代の人間で――それを刀と判ずることのできる人間は皆無だろう。そして――それが何かと、推測さえできないはずだ。
 だが、仮にここに現代人がいたなら一目でわかる。
 ひとつは回転式連発拳銃。
 もうひとつは自動式連発拳銃。
 そう、それはこの時代、この場所にあるはずのない、あってはならないはずの兵器だった――決して存在を許されない兵器だった。しかしその一対の『刀』は厳然として存在した!
 四季崎記紀の完成形変体刀十二本が一本――炎刀『銃』!

私のような最後の方の敵を知ってから読み始めた人間にとっては、そういう奴が続々と出始める第5話が驚きの展開となったが、リアルタイムで読んでいた人にとってはこちらこそが驚きだったのではないだろうか。完成形変体刀十二本の名は最初から全て明かされており、またそれには常に一定の順番があって、それでは炎刀・銃が最後になっている。だから読者としてはなんとなく炎刀・銃が最後の目標になるのだろうと思うのだが、そういうものがこの中盤で既に、読者に対してだけとはいえ、姿を見せるという。それはここで出てくるのか、という驚きがあるのではないだろうか。

そして、描かれたその姿はただの拳銃。現代人が見れば一目でわかると言うほどの。更に、そのような形をしているのは決して、この作品がファンタジックで時代設定目茶苦茶なので、武士の時代なのに二十世紀にあるような物体があってもおかしくない、というような発想ではなく、明らかにおかしいことなのだと地の文がその語りも高らかに強調する。大変な名シーンである。これを全面的にカットとは、ありえない判断だ。


他にもなんかあったような気もするけどもういいや。戦闘シーンが、原作の描写に比較的近いイメージで、かつアニメとしても良かった、というのが数少ない今回の美点ですね。


変体刀紹介コーナー
双刀・鎚

最も重い刀。力自慢の七花でさえ全く持ち上げることが出来ず、錆白兵だろうとこれを使って戦うことは不可能だろうと考えられるほど。はじめから凍空一族あってこその変体刀である。その外見は「石を削って作ったと見られる、石刀」「棍棒のような刀」と表現される。鞘も無くつばも無く、上下の区別も曖昧なので「双」の字が当てられるというがこじつけっぽい。手に持つ武器でシルエットがそれっぽいというだけで、もはや日本刀の要素がまるで無い。

変体刀の中では現実現代で作れる気がしないでもないもののひとつ。要するに密度の無茶苦茶高い物質を棒状にすれば良いだけだからな。


登場人物紹介コーナー
・凍空こなゆき

双刀・鎚所有者である怪力無双の凍空一族、その一員である少女。第6話も最後になってようやく分かることだが、一族郎党全員が七実に殺されており、最後の生き残りになる。凍空一族の設定は、こなゆきは一族の子供の中でも確実に弱い部類だが一般人と比べれば確実に力自慢と言える七花が足元にも及ばない怪力だったため、一族の成人がどれほど恐るべき存在なのか、と思いきや七実にあっという間にあしらわれたらしいというオチがつく。冷静になるとむしろ七実を引き立てるかませ犬にされただけみたいにも見える。

七花に初めて明確な手傷を負わせ、結果刀集めで初めて黒星をつけ、七花が初めて自分の意思で殺さなかった相手、と七花にとって初となることが多い人。とはいえ、何故殺さなかったのかという心情については定かでない。とがめの命令に背いたものであり、自分の意思を挟んだことは間違いないが、それがどういう感情に基づいてかは不明である。


・真庭狂犬

真庭忍軍十二頭領の一人。通称、伝染の狂犬。実質的な第6話での七花の対戦相手。その正体は残留思念と言うべきもので、元々の本体は既に死んでおり、真庭忍法・狂犬発動と称する特殊な能力で意思だけが他人の肉体を乗っ取りながら生き続けている。その際対象の記憶さえ手に入れられるという便利ぶり。そうして初代真庭の里創成期から生き続けている重鎮だが、その便利な能力によって磨き続けた技術こそが敗因になった。というストーリーだがよく考えると、長い人生、多くの経験によって積み上げられた技術による強さは間違いなく本物の筈である。それで七花に勝てなかったというのは結局彼女は七花の何千人倍もの経験を持ちながらその程度の強さにしかなれなかったということではあるまいか。

どうでもいいけど、最近になって狂犬発動のような能力をしばしば見かける気がする。『革命機ヴァルヴレイヴ』の主人公とか、『K』の第七王権者無色の王とか。


・真庭川獺

真庭忍軍十二頭領の一人。通称、読み調べの川獺。物体の持つ記録を読み取る、記録辿りなる真庭忍法を持つ。それ自体は大したものだが、それ以外の直接戦闘向きの能力は全く語られていない。わりと文字通りの意味で死ぬために出てきた人。
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