大海原の小さな光

人間たちは「極光島」の攻略を目指した戦いを始めることとになりました。だが、意気揚々と挑んだトップが無能だったりしたため惨敗に終わった。結果ある国では王が死んだため代替わりすることになり、次の作戦では指揮官として女騎士を使うことに。

肝心の戦いの内容はアッサリしていたが、全体としてはかなりの尺を使ったこれらの展開に主人公である勇者、魔王が全く絡まないというのがある意味すごい。同時に、直接には関係なくとも魔王の齎した変化がバタフライ効果的に影響を及ぼしているというのも確かである。魔王は世界の変革を目指しているわけだが、やはり世界だの国だのといったものの動きは個人の力など及びもつかないのだな、と思い知らされる。


あと、各国指導者が会議をしてるところが個人的には中々面白かった。先ず、状況が珍しい。これから主人公たちと戦う主要な敵とか、主人公の味方たちとかが話し合ってるところというのは腐るほどある。しかし、今のところ主人公たちの行動とはまるで無関係な連中の会議というのはありそうであまり無い。内容も実にいい感じに不毛ですばらしい。


その頃勇者は「開門都市」に来ていたが、魔族から人間に奪い返されたというそこは単に、人間が魔族をいびる世紀末な様相を呈してるところであった。いいですね、こういうところ。勇者も考えているとおり、勝敗が逆でも魔族と人間との立場が逆なだけの同じような状況になるだろうことは容易に想像出来る。必然、世界の状況を変えなければいけないという考えにも説得力が出るというものだ。


最後に、魔王と勇者とのラブコメ、はともかく魔王と女騎士とのやり取りが実にいいですね。メイド長以外には友人といえる者がいなかったが友達になって欲しいと言い出す魔王や、魔王の正体を、以前から勇者に聞かされていたとはいえ、受け入れる女騎士とか、その辺。こう、さりげなく人物を掘り下げて描くのがこの作品の良いところだと思います。