大海原の小さな光

神北拓也は既に死んでいた。小毬の語る断片的な情報からそう考えられ、小次郎老人によってほぼ裏付けられた。何故それを小毬本人が忘れているのかは分からなかったが。しかしある日理樹と出かけた小毬は帰りにふとしたきっかけで突如として兄にまつわる過去を思い出す。こう大雑把に見るとかなり無理のある展開で、細かいところでも気になる点はあるのだが、それでも面白いと思いましたよ。

先ず、拓也という親族はいない、てのが以前はいたけど死んだという意味だったこと。シンプルだが良いミスリードでした。その後の、理樹と小毬との実にまったりとした交流の描写も、最後のあまり多くを語らないが確実にここまで見せてきた情報を繋げる回想も実に良かったと思います。

なくしたものとは、忘れてしまった兄についての思い出のこと。それを、偶然にだが、見つけたがあまり良い気分にはなれませんでした、と。やはり作中の絵本のように大事なことを思い出す流れになったけれど、それだけでは不足であり、もう少し先が必要というわけか。この捻りも良いですね、とは思ったけれどまったりした人のまったりした展開の先にあったわりには重苦しい空気になったな。


今回は野球の描写があったな。ついに鈴がバッターの方にボールを投げた。到底打てない、大暴投としか言いようの無いボール玉だったけどな。

しかし、今回のリトルバスターズの出番は殆どこの野球の練習シーンのみ。他は専ら小毬とその相手をする理樹とに焦点が当たっているのだった。むしろリトルバスターズの出番を捻り出すためにこの野球の練習をやったのではという気もしてくる。