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傷物語 Ⅰ鉄血篇

『物語』シリーズ、エピソード0。

これは、文字通り始まりの物語。


 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードのことを、そろそろ語らなくてはならない頃だと思う。僕にはきっと、その義務がある。
『傷物語』10頁。

このような書き出しで始まる小説のことを、私は向こう十年は忘れることはないであろう。実を言えば、私はこの作品を最初に雑誌に載った時に読んでいるから、もう八年ぐらい経ったわけだけれど、片時も忘れたことはない。それは吸血鬼を扱う物語であり、その扱い方が私の求める理想像にかなり近かった。忘れていないのは、きっとそういうところが大きい。『傷物語』(以下『傷物』と略す)は私にとってそういう作品である。


まぁ、私の話などどうでも良い。原作は発表順だと二作目、三冊目。シリーズがかなり長引いてしまった現在になってみると、ごく初期の作品である。劇場アニメ版も比較的初期に製作が発表されていたし、一時期は二千十二年公開とまで言っていた。だが、いつまで経ってもその時は訪れないまま四年も遅れて公開された格好だ。

さて、私がここで問題にしたいのは、公開が長引いたことではない。重要なことは、アニメ版も比較的初期から製作が始まっていたらしいということだ。そのためか、このアニメ版『傷物』は現在のアニメ版『物語』シリーズとは表現方法が異なるところが結構見られる。例えば、たぶん『セカンドシーズン』からだったと思うのだが、現在のアニメ版は原作で章が区切れているタイミングになると、それに合わせて一瞬章番号を映す。挙句の果てには、AパートとBパートとの切れ目や、一回の放送が終わるタイミングは全て章が変わるタイミングにする、などの必要以上のこだわりを見せている。このアニメ版『傷物』のはそういう表現が一切無い。だが、「黒駒」みたいな表現は何度もある。この辺、非常にアニメ版『化物』っぽい。

他にも、冒頭が原作とは全く異なる。本来なら途中にあるべき出来事を持ってきており、本来原作の冒頭部分にあった、先述の「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードのことを(以下略)」の部分は綺麗に無くなっている。こういう大胆な構成の変更は現在のアニメ版『物語』シリーズでは考え難いことだ。最近のアニメ版はもはや、基本的に原作のストーリーを大まかになぞりつつ奇抜な絵を付けるだけになってしまっている。

なお、原作の冒頭(章番号001)には他にも

 吸血鬼にまつわるこの物語はバッドエンドだ。
 みんなが不幸になることで終わりを迎える。
『傷物語』13頁。

という、捨て置くには惜しいフレーズがあるのだが、まぁ、これについては劇場版三部作という構成と合ってないんだから仕方ないね。不定期に見ることになるだろう作品群について普通の人はそんな細かいことを覚えてないだろうし、かといって『鉄血篇』だけに限ると特にオチが付いてないだけでバッドエンドではないし。


原作は、シリーズの中でも最初の事件を扱うものとして違和感のない描写がされている。後の展開を知っているのが前提のメタギャグや、後の展開をいやに具体的に予言してしまうような言動など、そういったものが一切無い。その時、その場に生きている者として知り得ることしか知らず、考え得ることしか考えない。自然な描写しかない。私が事実そうだったのであるが、時系列通りに最初にこれを読み、次に『化物』を読んでも何ら違和感が無い。前日譚として非常に優れている。

このアニメ版はそのような『傷物』の性質を忠実に表現出来ているとも言える。アニメ版『化物』の後に続編(前日譚だが)としてこれを見てもおそらく違和感は無い。時系列通りに見たらどうかは分からないが。さておき。そう考えると、これは単に企画が古かったからではなく、そういう性質を持たせるよう意図したものという可能性もあるか。深く考えると謎めいてくるが、少なくともここまでは、良い映像化だと言えそうだ。一本の映画として全く纏まっていないことを除けば。


後、おまけの『混物語』について。少なくとも第一弾の『きょうこバランス』については全く時系列が不明だな。公園の名の読み方を知らないので『終(下)』以前なのは間違いないが。それは、最終章以前と言っているようなもので、何のヒントにもならない。冒頭には扇の名があるが、そもそも冒頭は本編より後だと思われるので、これもヒントにならない。お話は、何度もジュースを飲ませる掟上今日子がひどいなぁ、と思いました。
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