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終物語 第6話「そだちロスト其ノ參」

老倉育リターンズ。

老倉育の将来に幸多からんことを。


今回は『そだちロスト』編ラストにして、『終(上)』全体のラストでもある。いわばグランドフィナーレ、というにはまだ少し気が早いけれど、色々一区切りの話である。しかしながら、(半ば予想していたけれど)アニメ版はここで重要なところに大胆な変更というか割愛をしてきたので、大きく出来が悪くなった印象がある。まぁ、私は勝手にやるがね。


翌日、二人の妹、火憐と月火に起こされて、僕は学校に向かう――その際、僕は二人の妹に訊いてみた。名字が変わっているので名は伏せたが、小学生の頃、一時的にこの家に保護されていた子供のことを覚えているかどうかを、訊いてみた。二人とも覚えていないとのことだった。そんなものかなと思ったが、しかしどうやら事情が違って、そういう子は色んな時期に何人もいたから、どの子のことを言っているのかわからないらしい――どうやら僕は、他にも忘れている幼なじみが、何人もいるようだった。
『終物語(上)』373-374頁。

今回のオチは、原作では本来このようになる。アニメでは途中から綺麗さっぱりなくなっている。阿良々木くんが忘れていることが多いだけではないか、と思ったあなたはずのうが間抜けだ。これは阿良々木くんが小学生の時の老倉を覚えていなかったことのエクスキューズになるのである。しばしば起こる日常的出来事で、自分とは直接関係無かったから、細かいことを覚えていなかった、というわけだ。そして、そう考えればこのことは『終(上)』全体において最後に明かされるが、最も重要な情報である。

話の順番を逆に、いや、作中世界で本来起きた筈の順番にしてみよう。先ず、話を老倉の視点で見てみる。それは前回老倉が自ら言葉にしたのとほぼ同じ内容である。阿良々木家に保護されたことで自分の家庭事情が異常だと知った。それを自力で何とかすることは出来なかった。中学で阿良々木くんと再会した時には運命を感じた。これを機に状況を変えようと思ったが、計画は失敗だった。しかも、何故か阿良々木くんは彼女のことを忘れていた。そのくせ、餌に使った数学の知識だけはわがものとした。数年後、またしても、今度は高校で出会ったが、またしても忘れていた。老倉は思ったに違いない。阿良々木はなんて忘れっぽくてひどい奴だ、とね。

だが、これはあくまで老倉視点の話である。阿良々木くん視点にすると話は一変する。老倉が保護されていたのは類例が他にいくつもあることの内一つに過ぎない。故に老倉という個人を覚えることは出来ず、再会しても話が繋がることは無かった。そして、そうなってしまえば相手は数学を教えてくれる変な人でしかない。両親が警察官であることをみだりに教えてはならない、その立場を無暗に振り回してはいけない、という親の教育を破る理由は無い。まぁ、家を廃屋だと勘違いしたような勘の悪さなど、幾つか他の要因も重なってはいるが、半ば必然的展開だ。結果高校生のころには、老倉が小学生のころから積み上げられた阿良々木くんへの愛憎入り混じった感情を持つのに対し、阿良々木くんは老倉個人に対しまるで積み上げていない。理不尽に絡まれている、としか思えなかっただろう。

二人の立場は全く非対称的で、面白いぐらい話が噛み合っていない。老倉にとって阿良々木くんは他にいない極めて特殊な立場の存在だが、阿良々木くんにとっての老倉は人生にあった色々な出来事の内一つ、出会った人の一人に過ぎないのである。これは『物語』シリーズそのものの縮図とも言える。怪異の事件に遭って阿良々木くんと出会い、それが事件解決の一助となった者にとって、阿良々木くんは他にいない特別な存在だと思える。しかし、阿良々木くんにとって怪異絡みの事件に出会うのはよくあることなのだ。そういう構図と、これはピタリ一致する。

これが間違いなく意図的であろうことは、やはりアニメ版で省かれてしまった以下の扇の台詞からも分かる。

「いいキャスティングだったんですけれどねえ――ほら、あの人、今までのヒロインズの原点みたいなところ、あったじゃないですか。阿良々木先輩を揺さぶるには絶好のキャラクター性だったと言いますか。(以下略)」
『終物語(上)』377頁

そう、よく見れば分かるが老倉は今までの主要登場人物たちと少しづつ共通点を持っている。羽川のように親から虐待を受け、戦場ヶ原のように小道具を武器として人を拒み、神原のようにゴミ屋敷に住み、といった感じで。そういう今までの総決算のような人物を使ったのだから、お話も総決算とか縮図とか行った路線のものになると考えるのが自然だろう。だから、私はこの考え方にかなりの自信がある。

更に私は、この、阿良々木くんと老倉との非対称な関係こそこの『終(上)』全体を使ったミステリー性であると考える。言われてしまえば意外であるが納得もする、そして、言われなければ中々気付けない。ミステリー以外の何物でもない。


とまぁ、原作はかようにとても込み入った仕掛けをしている。アニメ版はそれがきれいさっぱり消えてしまっていて、残念でならない。私は、メディアミックスが原作と違うからと言って、ただそれだけで文句をつけるようにはなりたくないと常に思っている。そもそも、何をもって同じというのか。この世に完全に同じものなど二つとない。ましてや、物語が違う媒体で語られているのに齟齬があるのは当然ではないか。よって、原作の読後感が味わえるとか、アトモスフィアがあるとか、そういったことを大事にしたい。

しかし、このアニメ版にはそういったものが無い。見終わった後の気分は原作の読後感とはまるで変わってしまっている。その代わりに何か面白いものが作られているのかというと、別にそこまで面白く思えない。大体『そだちロスト』自体の表面的事件である密室消失も詰めが甘いし。これほど残念に思うのは『物語』シリーズのアニメ版では『化物』以来かもしれない。
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テーマ : 〈物語〉シリーズ
ジャンル : アニメ・コミック

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結論が思っていたのよりあっさりでした。

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