大海原の小さな光

地球では捕らえられたマズゥールカをアセイラム同様地球侵攻に積極的ではないタイプと見て伊奈帆が尋問。更に、あえて逃がして情報収集を狙う。火星ではマリルシャン伯爵がスレインを蹴落とそうと動き出した。「謀略の夜明け」というサブタイからは一体どういう謀略があるのかと思ったが、蓋を開けてみると色んなところで陰謀謀略が動いているというオチでした。うむ、良い。見ていて緊張感がとてつもないけど、面白い。

何れも大きな落とし穴を抱えている気がする。伊奈帆は未だ気付かない、己の決定的考え違いに。たとえば、アセイラムは未だ生きていて自力では動けない状態にある。その見立ては正しい。しかし、その解釈が間違っている。動けないのは監禁など無理に行動を封じられているからではなく、命はあるが意識不明で動けず保護されているということが分かっていない。ましてそれをやっているのがスレインだなどとは到底思えまい。もし分かっているのなら、助けるという表現はしないだろう。

たとえば、伊奈帆がマズゥールカに対して行った尋問、からの一連の交渉は最初にスレインと出会ったときに行っていれば良かったものばかりで皮肉というか、やはり根本的にずれているんだと思う。利用ではなく協力、何故スレインのときにこの返しが出来なかったのか。言わないだけならまだしも「利用されると困るのか」などといきなり聞き返すとは、相手が荒木飛呂彦の漫画の登場人物だったら「質問を質問で返すな」と言って怒られるところだ。

さておき。伊奈帆は何というか、自分だけがアセイラムを正しく理解しており、アセイラムは何らかの敵に狙われているので助けなければならない、というようなストーリーを無意識に夢想してそこに酔っている気がする。ロシアでのザーツバルム戦まではそれでも大筋で間違っていなかった。ただ、どこからどこまでが実際に敵で、どこからがそうでないのかを知らなかった。そして現在はそんな勢力は事実上（画面に映っている範囲では）いないというのにまだそんなストーリーを考えている。あぁ、その考え違いを突きつけられたときどうなるか、楽しみでならない。


火星の伯爵たちはバルークルス伯爵の方が不穏。最初は二人一セットみたいな扱いでイマイチキャラが立っていないと思っていたマリルシャンとバルークルスとだが、ここに来てマリルシャンの行動のお陰で一気にキャラが立った感がある。特に注目すべきは、マリルシャンがスレインに決闘を申し込んでいるときにバルークルスの表情が変わっていくことで、二人が断じてセットではなく独自の意図を持っていることを感じさせる。いや、カタフラクトはセットっぽいけど、それはさておき。何か土壇場でバルークルスがマリルシャンを裏切りそう。