大海原の小さな光

この世の悪が封じられたという箱アクシアを開け、幻影帝国を解き放ってしまったのはひめだった、という視聴者にとっては既に見え透いていた情報が主要人物に共有された、ほぼそれだけの話。隠し続けた重大な秘密をばらされたひめが走り去るも、そんなひめをめぐみたちは変わらず友達だと思い、励まそうとする。そんな友情物語或いは、それに対し過去の罪を許さないというフォーチュンとの考え方の相違、そういうのを見せたいのだと思う。意図はとてもよく分かる。分かるが、それに納得が行くかどうかは話が別だ。

友情にせよ、過去の断罪にせよ、それらの衝突にせよ、先ずそもそもの話として前提がいると思うんですよ。即ちアクシアとはどういうものか、何故開いたのか、ひめはそこにどのようにかかわっているのか、こういうところを詳らかに語っておいてでないとお話にならない。たとえば、ふざけて遊んでいてついうっかり開けてしまったみたいな展開だったら責任を問わざるを得ないが、邪悪なものは既に少しずつ漏れ始めておりその邪悪に唆されたとかだったら責任はあまり無い。その類例だが、箱自体が百年、二百年と時間が経ったら勝手に開いてしまうような仕様だったという可能性もある。つまるところ詳細が分からなけれ何も語ることは出来ないのであって、そこから目を逸らしてはどんなに良い話風に展開されようと欺瞞でしかない。

予告によれば、箱が開いたときのエピソードは次回語られるのかもしれない。だが、物事には順序とか段取りとかがあるのだ。それは今回中に言わなければ駄目なところだろ。それで初めて今回の内容は成り立つ。今回のめぐみやゆうこの態度を纏めると、箱が開かれた事情は知らないがひめは良い奴なので箱を開いたことも、それを隠していたことも責めるべきではない、とこのようになる。バカじゃないの。全く話が繋がっていない。


話の繋がりと言えば最後の方、ひめがめぐみのことを誤解して去っていくところ、誤解に至るまでの描写をギャグにしたのは問題だ。皆がみんな問題解決に最善を尽くそうとした結果、かえって問題が拗れたという大変面白い流れなのだが、描写がギャグなせいで非常にリアクションに困る。しかもそれで次回に続くし。


今回の記念企画は、サンシャイン。サンシャイン/明堂院いつきと言えば私は劇場版『花の都で』（略。長いので）が好きです。オリヴィエとの会話で彼を褒めるところ、逃げているだけだと自嘲する彼に行動していると返すところ。私の敬愛するある作家の書いたある作品に出てきた「人は嫌なことがあったらどんどん逃げていいんだけれど、目を逸らしているだけじゃ、逃げたことにはならない」という台詞と合わせて大好きな考え方である。逃げるというのは矢鱈と最悪の手段であるかのように語られがちだが、逃げてさえいないし問題が解決するわけでもない態度というケースも世の中にはあって、それに比べれば遥かにましなのだ。