大海原の小さな光

意思を持つ駒を使ったチェスが始まりました。駒は意思があるので無駄死にをするような命令には従わないことがある。しかし空が無茶苦茶な演説で煽ったら大変士気が上がって、全員が動き始めました。全員が動いているけれど、チェスです。どう見てもチェスのルールを無視した動きでリアルファイトをしているようにしか見えないが、チェスです。敵の魔法で駒が裏切らされたりしているが、チェスです。空の三文芝居で敵のクイーンが裏切ったりしているが、チェスです。

いや、本当にひどい勝負だった。「ノーホーマー・ノーサヴァイヴ」並みにずのうに悪い。心理戦や策略、謀略の入り乱れる戦いを期待して見始めた直後の展開がこれかよ。つっこみどころが恐ろしく多いが、中でもクイーンを裏切らせるあたりが特にひどい。恋愛シミュレーションが上手いから人を篭絡できる。いや、その理屈はおかしい。「リアルはクソゲー」発言といい、お前ちょっと、落とし神に謝れ。


ボロクソ言ったようだが、お話としては結構楽しめましたよ。『』兄妹が並はずれているところをちゃんと見せつつ、駒が言うことを聞かないだの、駒が裏切るだの、敵の強いる理不尽な状況に苦労してもいるところが中々好感度高し。奴はずば抜けた才能があるだの、十年、百年に一人の逸材だの言っておきながらいつもいつも苦労してるシーンしかないと本当に凄いのか不安になりますし、逆にそういう発言を嘘にしないよう常に圧勝してるところばかりを描かれてもそれはそれで飽きかねない。そういう印象を受けない絶妙な展開が実際良かった。

『』兄妹が正しく二人で一人の超人という仕事をしているのも良し。白から空への交代で流れが大きく変わったように見えて結局詰め切れず、最終的には二人合わせて何かやる風になっていて、どちらか一人が突出しているようにはなっていない。バディものなら当然なんだが、時々その程度のことも出来ていない作品があってだな。


あと、「だが断る」というジョジョネタが比較的細かく再現されていたのが変なインパクトあった。このネタはネット上では非常に広く知られており、またこれに対して一部のマニアックな人間から誤用が非常に多い、とも言われるネタである。比較的もとのニュアンスに近い使われ方をしているので、結構こだわった人間が書いているのかもしれない。

まぁ、私に言わせれば、こんなネタを『ジョジョ』の最大の特長みたいに言って考えもせず嬉々として使いたがる奴も、それに対してもとのニュアンスがどうのと下らんことを喋りたがる奴もどっちも同レベルなんですけどね。『ジョジョ』が長きにわたり人々に愛されてきたのは一級品の少年漫画だからだ。他に理由は一切無い。台詞、奇抜な効果音、ポージング、そんなものは全体をなす一パーツとすら言えぬ枝葉末節ですよ。真面目な話、態々そんなことを気にして読んでいた人間がどれほどいるというのか。


なんか、関係無い話に脱線してしまったが、楽しく見られる作品ではあるので次回も期待したい。